樽丸

 樽丸とは、酒樽や醤油樽の原材として、本市では主に酒樽を製作し神戸の灘方面に盛んに出荷、一時本市の特産としてこれ又有名であった。 樽丸に用いる材は主に吉野材で樹令60年生以上の胸高周囲2尺5寸位いの良質材を必要とした。製作方法は定尺に小切った丸太の太さに応じて、大割疱丁及び樫槌で柾目に割り、更に心材の外部2、3分程の辺材をのぞいて、それより外部の辺材を湾曲せる疱丁で年輪に沿って割ると言う様な非常に特殊な技術を要したるため需要が盛んであったが、其の反面樽丸を製作する業者は比較的小数で、その主なる者に桶谷常次郎氏などがあった。

(6)内地材製材

大正から昭和初期に於て内地材の杉、桧を専門に製材する業者は極く小数で其の生産量も一工場当り一ヶ月平均、300石から400石、大きい工場で500石内外で生産量はごく小量であった。 これは北洋材や米材の入荷によって多くの工場は北洋材や米材を専門に生産していた事と、今一つは当時建築材の中でも最も需要が盛んであった板類は米材の入荷によって天井板は米杉にとって変り、他の板類は秋田から徳島、九州、県内では新宮方面から大量に入荷した為めに、一般内地材製材所は円鋸一台で僅かにヌキ、タルキ、モヤ類を生産するに過ぎなかったためである。

 当時内地材を専門に製材せる主な工場は、住江製材所(植松町)広善製材所(元寺町)