同年6月更に告諭を管内に発して山林保護に急を説き、植樹を奨励せり。其の告諭文はよく維新後山林の荒廃せし情を知るに足るを以て左に之を記す。 告諭  山林樹木培養の儀は経国の要務決して忽にすべからざることに付其保護方に付ては是迄相達候次第も有之抑、樹木の人生に必要なる薪炭、器具の供給、家屋、橋梁、堤防等の築造及び水源を養い土砂を止め風潮を防ぎ頽雪を支うる等其効用最も大にして1日も欠くべからざるものとす。且当県は古来木の国の称あり、木材の良美を以て全国に栄称せらるゝは各人の熟知せらるゝ所也、然るに現今各地林相荒廃してうつ蒼たる色をなすもの殆んど稀なるに至る。今や之が輓回を策せだれば往々不可謂の巨害を来しとみに日用必需の材料に欠乏告ぐるに及ぶも亦知るべからず。己に維新前には旧藩各々山林取締の厳法ありて、多年継続せしも一時各般改革とともに、自ら懈弛に属せしより忽ちに各人其の保護の念を緩ふし乱伐するに及び殊に近時に至り其甚しきは根株をくつ堀し苗木を刈除するに至る、箇所も間々有之赴に相聞以之外之事に候。今普く殖産興益を謀り特に樹林繁殖の義は政府に於ても厚くその計画を尽せり。己に山林●進会の説も之有その培養篤志の者へは、夫々褒賞を賜り専ら民志を奨励せらるゝの今日に当り前文の如き乱妄の所為あるは実に思わざるの甚しきものと謂うべし、且又此弊風自然彼此に染習候様にては万々不相済次第に之有就ては各自愈厚く山林の重要なることを辨知し、決して目前の小利を事とせず永遠の得益をはかるこそ肝要の事に付各地山林所